3月のコラム
「ガン」は食事で予防できる


 我が国の死亡原因の1位はガン。日本人の4人に1人はガンで亡くなっています。このガン予防には、もちろん休養が大切ですが、とくに身体を養う食事が重要であることが、つぎつぎと明らかにされています。

○基本は栄養バランスのとれた食事
 ガン予防の基本は、栄養バランスのとれた食事を、規則正しく摂ることです。栄養の偏った食事をしたり、暴飲暴食や不規則な食事をしていれば、健康を損ね、免疫力の低下をまねきますから、「ガン」が生じやすくなるのです。また、食品には微量ながら発ガン性の物質を含んでいたり、ガンを助長するものもありますから、そうしたものを偏って食べれば、どうしてもガンになりやすくなります。
 厚生省は、健康のために1日30種類以上の食品を食べるようにとすすめていますが、これを守れば、栄養の偏りを防ぎ、ガンを予防するとともに、動脈硬化の予防にも役立ちます。

○野菜にはガン予防に役立つ成分がいっぱい
 ニンジンなどの緑黄色野菜に多いカロチン類をはじめとして、野菜に含まれるいろいろな色素に、ガンや動脈硬化の元凶とされる活性酸素の害を防ぐ働きのあることが確かめられています。そして、実験的に調べてみると、明らかに発ガンを予防する作用のあることがわかっています。
 アメリカでは、ガン予防にアブラナ科の野菜が良いといわれます。アブラナ科の野菜に含まれるフマール酸という成分に、肺ガンを予防する作用のあることが明らかにされており、そのほかにも発ガンを予防する成分が含まれているのです。アブラナ科の野菜としては、ダイコン、カブ、キャベツ、ハクサイ、小松菜、タカナなどたくさんあります。セリ科の野菜にも、ガン予防に役立つ成分がいろいろとみつかっています。 セリ科にはニンジン、セロリ、パセリ、ミツバ、セリなどがあり、中でもアシタバに含まれるカルコンやクマリンという成分に、強い発ガン予防作用があるという研究報告があります。
 このほか、野菜には食物繊維、ビタミンAやCなど、ガンを予防する作用のある物質がいろいろと含まれていて、緑黄色野菜をたくさん摂る人にガンが少ないという事実が明らかにされています。

○きのこや海藻類、緑茶はガンを予防する
 きのこ類に制ガン作用のあることは、昔からいわれています。研究も多数行われていて、ガンの薬として、カワラタケからとったクレスチン(飲み薬)や、シイタケから作ったレンチナン(注射薬)も実際に使われています。シイタケは食べてもガン予防に役立つことがわかっていますし、そのほか、エノキダケやマイタケにもすぐれた制ガン作用のあることが、疫学調査や動物実験などで確かめられています。
 コンブをはじめ海藻類の制ガン作用についても研究が進められています。コンブ類は、そのものを食べても、だし汁を飲んでも、ガンに対する効果が期待できるそうです。そのほか、アマノリ(浅草ノリ)やワカメにもガン予防の効果があるといわれています。
 静岡県はガンによる死亡率が低く、とくに胃ガンが少ないことが知られています。詳細に調べてみると、ガン死亡率の低い地域はいずれもお茶の産地でありそこに住む人たちは、日頃からお茶をよく飲み、しかも頻繁に茶葉をかえ、濃いめのお茶を飲んでいることが明らかにされました。さらに、動物実験で調べてみると、緑茶を与えた動物にガンの発生や増殖がずっと少ないことがわかりました。
 ハワイの日系人を調べた研究で、胃ガンの危険の高い食品と、胃ガンになりにくい食品をリストアップしていますが、牛乳は胃ガンになりにくい食品の1つにあげられています。また、国立ガンセンターや愛知県ガンセンターの調査でも、牛乳を多く飲む人には、胃ガンが少ないし、それだけではなく大腸ガンも少ないという報告がされています。

○ガンの原因になる食べ物
 一方、食塩をたくさん摂ると胃ガンの原因になることがわかっています。また、脂肪の多い欧米型の食事は、乳ガンや大腸ガン、前立腺ガンなどの原因になるといわれます。塩や脂肪の多い食事は、高血圧や動脈硬化の原因にもなりますから、控えるようにしたいものです。 そして、食事とはいえないかもしれませんが、タバコはあらゆるガンをふやしますから、ガン予防のためにはなによりも禁煙が大切です。

C コハシ文春ビル診療所 院長 小橋 隆一郎