4月のコラム
油断大敵、「肥満」が招くこれだけの危険


○お相撲さんだって太りすぎはよくない
 太っていて得をするのはお相撲さんだけと言われます。お相撲さんはある程度体重がないと強くなれないからです。それゆえ、お相撲さんたちは動きが悪くならない範囲で体重をふやすように努力しないといけません。 相撲をとるには必要な体重であっても、急激な体重増加は健康面から見てみると肥満の害が出てきます。
 現役力士の中には、糖尿病や高尿酸血症(痛風)、高脂血症などを持っている人が少なくありません。それが将来、動脈硬化をすすめて狭心症や心筋梗塞、脳卒中などを引き起こす原因となります。ですからお相撲さんも引退したあとは、逆に今度は減量のために努力することになるのです。
 肥満というのは、生活習慣病をすすめる重要な原因になっています。一般の人たちの死亡統計を見ても、死亡原因を正常体重の人と肥満者について比較すると、すべてに肥満者が高く、唯一低いのは自殺だけという結果が出ています。

○どうして肥満は健康によくないのか?
(1)血圧を上昇させ、高血圧を引き起こし、悪化させます。
(2)血液中の中性脂肪や悪玉コレステロールを増加させ、それが血管壁に沈着して動脈硬化を進行させます。
(3)動脈硬化がすすむと、狭心症、心筋梗塞、脳卒中、ボケなどの原因になります。
(4)糖尿病の重要な原因であり、たとえ糖尿病素因のある人でも、太らなければ発病は予防できます。
(5)高尿酸血症を起こしやすくなります。これは痛風の原因となる他、動脈硬化を促進します。
(6)ガンになる人も多く、とくに男性では大腸ガンと前立腺ガン、女性では乳ガン、子宮体ガン、卵巣ガンが肥満者に多いと言われます。
(7)肝臓に脂肪がたまる脂肪肝や、胆石症、膵臓炎も肥満者に多く見られます。
(8)重い体重を支えるために、骨や関節をいため、腰痛、膝痛、脚痛などを起こします。
(9)転んだり、階段から落ちたりしてケガをしたり、また交通事故を起こすことも多く、死亡統計を見ると、事故死も肥満者に多いという結果が出ています。
(10)女性では月経不順や不妊症になりやすいということがわかっています。
その他、手術のときに麻酔がききにくく、しかも出血が多いとも言われます。

○理想的な体重とは?
 いろいろな研究調査によると、標準体重ないしはそれ以下の痩せている人よりも、やや太りぎみの人が病気も少なく長生きであるとされています。しかし、標準体重を20%以上も超えると、糖尿病、高血圧、高脂血症、虚血性心臓病、脳卒中などの生活習慣病がぐんと多くなり、死亡率も高くなります。では、理想的な体重はどれくらいでしょうか。
 医学的には、体重が標準体重より10%以上になった場合を軽度の肥満、20%を超える場合を肥満としています。標準体重の算出法にはいろいろありますが、一般的にはブロカ法の桂変法がよく用いられます。最近はBMI指数という肥満判定法も使われます。テレビCMにも登場する体脂肪計で測っても結構です。
 理想的には、標準体重の10%以内、BMI指数では24以内で、やや太りぎみがよいのです。もし、それを超えていたら、ぜひ減量を心がけてください。肥満それ自体は生活習慣病ではありませんが、生活習慣病の重要な原因になるからです。

【肥満度の算出法】
(1) ブロカ法の桂変法
標準体重=(身長cm-100)×0.9
肥満度=(体重-標準体重)÷標準体重×100
判定....0以上10未満は「正常」、10以上20未満は「やや肥満」、20以上は「肥満」、マイナスは「痩せ」

(2) BMI指数(ボディ・マス・インデックス)
BMI指数=体重kg÷(身長m×身長m)
判定....20以上24未満は「正常」(22が標準体重)、24以上26.5未満は「やや肥満」、26.5以上は「肥満」、20未満は「痩せ」

C コハシ文春ビル診療所 院長 小橋 隆一郎