11月のコラム
くだものは高血圧を予防し、ガンを未然に防ぐ働きもある


 秋はくだものの豊富な季節、私たちの味覚をたのしませてくれます。栄養的にみると、くだものはビタミン(特にビタミンC)とミネラルを供給する食品ということになります。また、健康にとてもたいせつな働きをしている食物繊維の供給源でもあります。

○リンゴの産地に脳卒中が少ないわけ
 むかしから、東北地方は脳卒中の死亡率の高いことが知られています。これは塩の摂取量が多いために血圧が高くなりがちで、しかも寒さがきびしいといったことが原因と考えられています。ところが、この東北地方の中で、青森県の一部の地域だけ、脳卒中の死亡が少ないところがありました。調べてみると、それはいずれもリンゴの産地であり、リンゴをよく食べている人に、高血圧も脳卒中も少ないことがわかりました。さらに理由を調べてみると、リンゴに含まれているカリウムのせいであることがわかりました。
 塩のとり過ぎが高血圧の原因になるのは、塩の成分の1つであるナトリウムに、血圧を上げる作用があるからです。これに対して、カリウムは体内でナトリウムと拮抗して働き、ナトリウムを細胞から引き出し、さらに体外に追い出す働きがあるのです。こうして、カリウムは塩の害をへらし、高血圧を改善し、脳卒中を予防するのです。カリウムは、野菜、イモ、豆、海藻などいろいろな食品に含まれますが、くだものにも多く含まれ、特にアボガド、バナナ、まくわうり、メロン、イチゴなどに豊富です。

○食後のくだものは胃ガン予防に役立っている
 私たちが食事をするたびに、胃の中ではいつも発ガン物質が作られている、とお話しすると、皆さんはびっくりするかもしれません。野菜などに含まれる硝酸は、体内に入ると亜硝酸に変わり、これがたんぱく質食品に含まれるアミンといっしょになると、胃の中でニトロソアミンという強力な発ガン物質が生じるのです。 とはいえ心配は無用、このとき同時にビタミンCをとっていれば、ニトロソアミンができるのを抑えることができます。それが「食後のくだもの」なのです。くだものにはビタミンCが豊富に含まれていますから、食事によって生産がはじまっているニトロソアミンに、強力にストップをかけてくれるのです。
 「食後にくだもの」の効用としては、口がさっぱりする、水分を補う、酸味が消化液の分泌を高めるなどがありますが、ガン予防のためにも理にかなった習慣だったのです。なお、パイナップルやパパイヤにはたんぱく質を消化する酵素が含まれていて、肉類などのたんぱく質食品の消化吸収を高める効果もあります。 ビタミンCを多く含んでいるくだものとしては、イチゴ、キウイフルーツ、パパイヤ、柿、柑橘類、プリンスメロンなどがあげられます。

○くだものは若さをたもち美容にいい食品
 この他、ビタミンCには中高年の病気や老化の防止に役立つ働きがいろいろあります。まず、動脈硬化や体の老化、ガンなどの原因となる活性酸素の作用を抑える働きがあります。また、細胞と細胞を結びつけているコラーゲンという物質が作られるときにも、ビタミンCは重要な働きをしています。コラーゲンがたくさん作られれば、血管の細胞をしっかり結びつけて血管を強化し、動脈硬化を防ぎます。コラーゲン入りの化粧品があるように、皮膚の細胞の若さを保ち、張りと潤いを与えて美容にも役立ちます。また、ビタミンCには皮膚を色白にする働きもあります。こうした理由で、くだものは美容によい食品といわれるのです。
 ひとつ注意していただきたいのは、体によい食品だからと、食べ過ぎれば、肥満の原因になります。ごはんもへらし、甘いものも極力ひかえているのに、ちっともやせられないという女性の場合、しばしば、くだものの食べ過ぎが原因になっています。くだものには果糖という糖分が含まれていて、たくさん食べれば砂糖やごはんをとったのと同じになり、カロリーのとり過ぎになるのです。
 くだものは二日酔いや悪酔い予防にいいといわれますが、これも事実です。アルコールをたくさん飲むと水分不足になりますが、くだものは不足した水分を補給してくれます。さらに、含まれている果糖がアルコールの分解を促進して、酔いをさましてくれます。また、柿に含まれるタンニンにはアルコールの吸収を妨げる働きがありますから、飲み過ぎたときはすぐに柿を食べれば、悪酔い予防にも効果があるはずです。

C コハシ文春ビル診療所 院長 小橋 隆一郎