5月のコラム
乳製品は健康を増進し、長寿に役立っている


○牛乳を飲んでいるとガンになりにくい
 牛乳は栄養バランスのとれた、とてもすぐれた食品です。昔から成長期の子どもや妊産婦、回復期の病人などに、栄養食品として勧められてきました。そして、最近の研究によれば、いろいろな病気の予防や改善に役立つことが明らかにされています。
 第1は、胃ガンの予防です。日本は世界でも有数の胃ガンが多い国です。それにもかかわらず、同じ血を引いたハワイの日系人には胃ガンが少ないので、その違いはどこからきているのかを調べたところ、ハワイの日系人は日本人に比べて牛乳を多く飲み、それが胃ガン予防の一因になっている、つまり食生活が重要であるという結論が出ました。また、我が国の国立がんセンターや愛知県がんセンターの調査でも、牛乳をよく飲む人に胃ガンが少なく、さらには大腸ガンも少ないという報告が出ています。
 私たちはふつうに食事をしていても、胃の中にはニトロソ化合物という発ガン物質が自然に生じます。牛乳にはその発ガン物質の作用を抑える働きがあるのです。また、牛乳に含まれる乳糖は、腸内細菌のうちの善玉菌を増やすので、悪玉菌が作り出すいろいろな発ガン性の物質が減って、大腸ガンを予防するものと考えられます。

○乳製品は老化を防止し、中高年の病気を予防する
 世界各国の人たちの食事と健康の関係を調べたWHO(世界保健機関)の報告によると、牛乳や乳製品を多くとる習慣がある地域の人たちには、高血圧や動脈硬化が少なく、長寿者が多いそうです。
 牛乳やチーズに含まれるタンパク質は、血管の柔軟性を保ち、血管を強化してくれます。タンパク質には塩の害を減らす作用もあります。さらにまた、牛乳に豊富なカルシウムには高血圧を予防する作用があるという研究発表も少なくありません。 それらの総合作用によって、乳製品は高血圧や動脈硬化を予防し、脳卒中や心臓発作を未然に防ぐものと考えられます。牛乳に含まれる乳糖は、腸内に住んでいる善玉菌を増やすとお話ししましたが、善玉菌が増えて悪玉菌が追い払われれば、悪玉菌が作るいろいろな有害物質が腸内から減りますから、老化防止や生活習慣病(成人病)の予防にも役立ちます。
 同じ乳製品であってもバターは、そのほとんどが動物性脂肪ですから、これをとりすぎると動脈硬化を促進して、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞の原因となります。

○日本に不足しているカルシウムの貴重な供給源
 私たちの体内のカルシウムは、その99%が骨や歯を作ることに使われています。残りの1%は、血液やリンパ液、筋肉、神経、臓器などにあって、 (1)筋肉の収縮、(2)脳や神経の情報伝達、(3)神経の興奮を鎮める、(4)ホルモンや消化液の分泌、(5)血液の凝固など、重要な働きをしています。 このように大切なカルシウムですが、食物からとる分は年齢とともに体内への取り込みが悪くなり、不足がちになります。その結果、骨のカルシウムをとり出して使用しますから、骨はもろくなります。老人が骨折しやすいのはこのためです。とくに、女性が更年期を過ぎると、ホルモンの関係で骨から失われるカルシウムが増え、骨が弱くなります。それゆえに、中高年女性に腰や膝をいためる人が多いのです。年をとってから骨折などで入院すると、その間にボケが始まったり、寝たきりになる人が少なくありません。そうしたことを防ぐために、中高年になったら、とくに女性は、積極的にカルシウムをとるようにしたいものです。牛乳はこのカルシウムの補給に、とても適しています。
 厚生省が行っている国民栄養調査によれば、日本人に唯一不足している栄養素はカルシウムです。牛乳をコップ1杯(約200cc)飲めば、1日の必要量の3分の1ないし4分の1はとることができます。そのほか、チーズやヨーグルト、脱脂粉乳などを利用してもいいでしょう。
 このように、すぐれた食品の牛乳や乳製品ですが、一方では、ぜんそくやアトピー性皮膚炎、花粉症などのアレルギーの原因にもなります。ただし、それは大量にとることがいけないのです。牛乳を水代わりにガブガブ飲むとか、チーズをお菓子代わりに食べることなどはやめて、適量をとるようにしましょう。

寝床に入る前に温かい牛乳を飲むと、よく眠れるようになり、睡眠薬代わりになる。
チーズに含まれる鉄分は吸収されやすく、鉄欠乏性貧血の人に適している。
牛乳で下痢をする人は、温めて飲んだり、クリーム煮やグラタンなどの料理に利用するとよい。
赤ちゃん用粉ミルクを、やや濃いめに水で溶いて飲むと、便が柔らかくなり通じがつきやすくなる。便秘の人は自分にあった量を見つけて、牛乳の代わりに飲むとよい。

C コハシ文春ビル診療所 院長 小橋 隆一郎